06


「駄目です筆頭、開きません!」

伊達軍の兵達がなんとか門を開けようと試みたがびくともしなかった。

「そうか。北条のジジィ籠城する気か…」

「如何致しましょう?」

そうだな、と腕を組んで考える政宗の隣で遊士も考える。

「小田原城の栄光門といえば破られた事がないと有名ですからね」

彰吾も閉じられた門を見つめる。

破られた事がない、か。han、そんなの北条にゃ宝の持ち腐れだろ。

…ん?待てよ。破られた事がない?

遊士は一人、首を傾げると手を打った。

「それだ!Nice 彰吾!」

は?と三人は、いきなり声を上げた遊士を見る。

「政宗、ここはオレに任せろ」

「何か良い手でも浮かんだか?」

「あぁ、ばっちりな」

なら、やってみろ。と言われて遊士は刀を一振り抜く。

「Hey、お前等そこ退いてくれ。んで、なるべく離れてろ」

門の周辺に集まっていた兵達に声をかけ、退いてもらい遊士は刀を上段半身に構えた。

スッと瞳を細め、前方を見据えて、刃先を合わせる。

意識を集中させパリパリと刀に雷を纏わせる。

「なるほど、確かに最良の手だ。狼煙がわりに派手にかましてやれ」

政宗は腕組みをしたまま遊士を見つめて、ヒュウと口笛を吹いた。

「Yes sir.行くぜぇ、HELL DRAGON!」

刀に溜めた雷撃を突きを繰り出す要領で刀ごと突き出し、前方へ放った。

何も馬鹿正直に門を通る必要は無い。

門の側、何処までも果てしなく続きそうな城壁を景気良く吹き飛ばしてやった。

「っしゃ!」

「I did it well.行くぜてめぇら!」(良くやった)

「「Yeah――!!」」

褒めるようにくしゃりと政宗に頭を撫でられ遊士は得意気に笑みを閃かせた。

「まったく、予想外の事を為さる御方だ…」

驚き半分、呆れ半分で苦笑した小十郎に彰吾も頷く。

「でも、これぐらいならまだ序ノ口ですよ」

何だそれは、と視線を向けた小十郎に彰吾は肩を竦めただけで何も言わなかった。




同時刻―。
派手な音と、大きな震動をその身に感じた北条 氏政は顔を青く染めて外を見た。

見れば頼りにしていた栄光門の方からもくもくと白煙があがっている。

「な、何事じゃ!?」

うろうろと部屋の中を彷徨き回り氏政はぶつぶつと何か呟く。

「氏政様!大変です!」

そこへ家臣の一人が慌てて入室して来た。

「何じゃ!?」

氏政は怒鳴るように聞き返し、早く報告するよう告げた。

「栄光門が突破されました!」

「なにぃ!無敵を誇る栄光門が突破されたじゃと!」

「はい、どうやら伊達軍は城壁の一部を破壊して進軍して来た模様…」

「うぬぅ…、おのれ伊達の小童が!はっ!そうじゃ、風魔は…風魔はどこじゃ!?」

氏政の声にすぐ側に音もなく影が現れる。

「………」

「おぉ、風魔!我が北条家に仇なす愚か者共を今すぐ始末してきてくれ!」

風魔は首を縦に一度振るとフッと音もなく消えた。

「ふぃ〜、これで一安心じゃ」

顔色が元に戻った氏政は、自身の勝ちを確信したかのように笑った。






ドサリ、と崩れ落ちる足軽を見届ける暇もなく刀を振るう。

「さっきより増えてるな」

「本陣が近いせいでしょう」

栄光門を抜けた伊達軍はその勢いに乗り、すでに氏政の近くまで来ていた。

飛んできた弓矢を打ち落とし、遊士はチラリと政宗を見る。

刀を振るう政宗はどこか愉しそうで、鋭く細められた眼孔がギラギラと光っていた。

「雑魚は引っ込んでな!」

やっぱ強いな。一刀流だけであの強さ。是非とも今度、六爪流で相手して貰いたい。

そしたらオレも今度は二刀流で…。

「楽しみだな」

別の事を考えながら遊士は目の前の敵をズバッと切り捨てる。それぐらい遊士にも余裕があった。

そして、風が変わったのはその直後。

生温い風、微かな違和感。

第六感が告げた。

遊士は瞬時に右手にある刀を強く握り、左手は鞘に納めてある二振りめの刀の柄にかかっていた。

チキッ、と鯉口を鳴らし周囲を警戒する。

と、同時に黒い影が姿を現した。

「政宗!」

「政宗様!」

遊士と彰吾が声を発したのと政宗が振り向いたのとどちらが先だったか。

キィン、と襲いかかった黒い影と政宗の間には瞬きの間に覇龍が差し込まれていた。

「政宗様!…っ、てめぇは風魔!」

黒い影、風魔 小太郎は小十郎に対刀を弾かれると素早く離れ、距離をとった。



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